ヴィーニョヴェルデという種類のワインがあるのをご存知でしょうか。ワインというと、赤・白・ロゼなどが主流ですが、このヴィーニョヴェルデはなんと「緑のワイン」と呼ばれているのです。
そして、このワインは、ポルトガル国内でしか造ることを許されていないのです。
そんなヴィーニョヴェルデですが、いま世界的に人気が高まってきているワインとして注目されています。国内での流通量も増えてきていて、ワイン業界においてもヴィーニョヴェルデ流行の機運が高まっています。
そんなヴィーニョヴェルデの魅力についてご紹介していきます。
ヴィーニョヴェルデはワイン王国ポルトガルならではのブランド
ポルトガルの北西部、おもにミーニョ地方に広がる地域はヴィーニョヴェルデと呼ばれます。その地域で造られたワインのみが、“ヴィーニョヴェルデ”と名乗ることができます。
この地域には約2万ヘクタールのブドウ畑が広がっていて、DOC*としては世界でも最大級の規模を誇ります。そして1908年というワイン業界でも早い段階で原産地の境界の設定が行われたのです。
この地域のワイン造り自体も、紀元前96年には始まっていたと文献に残されていて、2200年ほどの歴史を有す屈指のワイン生産地です。
気候と地理的要因に恵まれた土地
1908年9月18日に正式に国から指定されたヴィーニョヴェルデ地方は、ポルトガルで最大のワインの境界領域で、国内のみならず、ヨーロッパにおいても最大の地域の1つに数えられます。その広さは、ポルトガル全土にあるワイン産地の15%の面積を占めています。
ヴィーニョヴェルデ地方は、ポルトガルの北西部、エントレ・ドウロ・エ・ミーニョ(ドウロとミーニョの間)として知られる地域に広がっています。北はミーニョ川、南はドウロ川、東はペネダ、ジェレス、カブレイラ、マランの山々、そして、西には大西洋が広がります。
ヴィーニョヴェルデ地方は西岸に広がる大西洋の影響や、東から西に流れる主要な川の谷の向きに強く影響を受けます。この地方は降雨量が多く、気温が穏やかで、寒暖差が無いことが気候的な特徴です。
この地方の土壌はほとんどが花崗岩ですが局所的に片岩質の地域もあります。気候の変化が少ないため、ヴィーニョヴェルデ内のいくつかの地域には、明確なテロワールの特徴が表れるのです。
微発泡が特徴の飲みやすい若い白ワイン
ヴィーニョヴェルデに使用されるブドウは、通常のワインと比べると1カ月から2カ月ほど早く、完熟する前の若い段階で収穫されます。
ワインが発酵する過程で発生する気泡がそのまま楽しめる形で製品化されたのがヴィーニョヴェルデの最大の特徴と言えます。
微発泡と言っても、ワイナリーやワインの種類によって炭酸の強さも違い、ほとんど炭酸を感じられないものもあります。
基本的には1気圧程度の発泡(一般的なビールが2気圧程度)なので非常に弱い発泡のこのワイン。
アルコール度数も白ワインと比べても低いので、とっても飲みやすくて爽やかなのが特徴で、一度飲んだら忘れられなくなる魔力さえ持つのがこのヴィーニョヴェルデです。
新しい製法も取り入れながら進化を続けるヴィーニョヴェルデ
このヴィーニョヴェルデ地域はもともと赤ワインの産地でした。しかし、瓶内二次発酵製法によって造られた、軽い微発泡を帯びた白ワインが人々の心を捉え、白ワインにシフトしていったといわれています。
伝統的に糖分を加えて二次発酵させていた製法も、現在では二酸化炭素を添加する製法が主流になりつつあります。また、流通量は少ないものの微発泡の赤ワインを冷やして飲むスタイルも楽しまれています。
ヴィーニョヴェルデはボトリングする前にガスを添加、アルコール分は9-12.5%程度に抑えられています。ガス圧は0.7気圧前後で、アルコールが高いものに限り、バランスを取るためにガス圧が低めに調整されます。
しっかり管理されて愛され続けるブランド
ヴィーニョヴェルデと名乗るワインに使われるブドウは、47品種が認可されていて、単一品種での醸造、瓶内二次発酵による微発泡、ロゼ、赤と様々な種類があります。
そしてポルトガル国内のワイン法によって、地域のブドウを100パーセント使い生産したうえで、熟成期間やアルコール度数などの厳しい基準をクリアしたワインのみが「D.O.P.ヴィーニョヴェルデ」と表記することが許され、高い品質が保証されています。
*DOCとはワイン格付け審査の一つで、統制原産地呼称ワインと呼ばれ、栽培から出荷までの生産過程はこの規定に基づき行われなればなりません。審査の対象としては、生産地、栽培方法、ブドウ品種、最大収穫量、最低アルコール度数、熟成方法などがあります。
「緑のワイン」は緑色のワインというわけではない
赤いワインだから赤ワイン、透明だから白ワインという呼び方考えると、「緑のワイン」は緑色をしているの?という想像を廻らしてしまいます。
この「緑のワイン」という呼び名は、ポルトガル語の“Vinho Verde”が直訳されたものです。
ポルトガル語で「vinho」はワイン、「verde」緑という意味があります。直訳すると“緑のワイン”となります。
しかし、ヴィーニョヴェルデとは、完成したワインの色ではなく、完熟する前の、まだ緑色をしたブドウを用いて醸造されることからこの名が付いたとされています。
また、ヴィーニョヴェルデの産地であるヴィーニョヴェルデ地方のブドウ畑が広がる風景が、冬になってもブドウの緑色で輝き美しかったことから、Verde「緑の」という形容詞が添えられ、“Vinho Verde”の名前が付いたともされます。
他にもVerdeという単語自体が“若さ”という意味を持つため、早熟で刈り取られるのブドウで造られるワインを形容してVinho Verdeと呼ばれるようになったという説もあります。
いずれにせよ、赤でも、白でもないヴィーニョヴェルデは、ワイン王国ならではの愛情が存分に注がれ、人々に愛されるブランドとして確立することに成功した、ポルトガルのこだわりと誇りが感じられるワインなのです。
ヴィーニョヴェルデの品種
ポルトガル北西部、山と大西洋との間にあるヴィーニョヴェルデ地域は 2万1000 ha におよび 、9つのサブリージョンと、約600の醸造ボトラーを擁します。
また、この地域だけで19,000件ものブドウ生産者が登録されていて、約45種類の固有ブドウ品種が生産されています。そしてヴィーニョヴェルデだけで約2000ものワインブランドがあります。
全体の生産量の70%が国内で消費され、残りは海外輸出用に造られます。輸出量では地理的に近いアメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イギリスに次いで、日本は6番目にランクインしています。
ここからも、日本でヴィーニョヴェルデが流行しつつあることがうかがえるのではないでしょうか。
ヴィーニョヴェルデに使用される主な品種は、ローレイロ、アリント、アザール、トラジャドゥーラ、パデイロ、エスパデイロなどがあり、中でも最もメジャーで、世界中にファンを抱えるのがアルバリーニョです。
スペイン北西部のポルトガルにほど近い地域である、リアス・バイシャスでも栽培されている品種で、ヴィーニョヴェルデの中でも高級ブドウ品種として扱われています。
では、アルバリーニョについて詳しく見ていきましょう。
ヴィーニョヴェルデのアルバリーニョはどんなワイン?
アルバリーニョは、ポルトガルやスペインで作られる白ワイン用のブドウ品種で、シャルドネなどのメジャー品種に比べるとその知名度は下がりますが、アルバリーニョが持つポテンシャルと魅力を知れば、きっとご自宅のセラーに一本欲しくなるはずです。
なぜ日本人を魅了するのか。日本人に愛される要素がぎゅっと詰まったアルバリーニョについて見ていきましょう。
アルバリーニョはイベリア半島の北西部が原産の白ブドウです。スペインでは高貴な品種と言われ、白ワインが盛んに造られています。
アルバリーニョはもともと、フランスとドイツの国境地域、アルザス地方に起源を持つ、リースリング種の亜種であると考えられてきました。
リースリング種に関する最古の記録は15世紀にまで遡ることができ、フランスのプティ・マンサン種とも近縁だと言われています。
ポルトガルのヴィーニョヴェルデ地方では、アルバリーニョはとても一般的に使われているブドウ品種ですが、モンサオンとメルガーソの畑でのみ栽培が認可されています。
この他、リベイロ、リマ、ブラガ、バルデオーラスなどの地域では、ブレンド用の品種として栽培され、ロウレイロ種、ゴデージョ種、カイーニョ種、アリント種、トレイシャドゥーラ種などが相性が良いとされブレンドされます。
アルバリーニョの果実は小粒で緑色をしていて、房は小ぶりです。果皮が厚いため、ガリシア地方のような雨の多いエリアでもウドンコ病による病害にも負けない強さがあります。
このアルバリーニョですが、実は、日本の新潟県や大分県でも栽培されるようになりました。日本では2000年代に入ってから栽培が始まり、いずれの産地にも共通するのが、海に近い場所であるということです。
フルーティなのに爽やかで、高級感も漂うアルバリーニョがこの日本でも作られ始めたのです。
聞きなれない品種のアルバリーニョですが、世界中のワインファンが、このアルバリーニョに注目し始めました。
それまでは知る人ぞ知るヴィーニョヴェルデの逸品だったアルバリーニョは、ソムリエの目に留まり、一気に世界中に広がり、熱狂的なファンを獲得したのも納得がいく、素敵なブドウ品種なのです。
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ヴィーニョヴェルデのブランコってなんだろう
ヴィーニョヴェルデはポルトガルの一地方の名前でもあります。原産地呼称制度によって、多くのワインもヴィーニョヴェルデの名前を使っていますが、ヴィーニョヴェルデ地方では、微発泡のものだけでなく、白ワイン(ブランコ)も造られています。
このワインたちは、ヴィーニョヴェルデの白ワインで、直訳してしまうと「緑のワインの白ワイン」となり、意味が通らなくなります。
その点でも、ヴィーニョヴェルデを日本語に訳してしまうと、誤解を招いてしまうので、ポルトガル語のまま固有名詞としてヴィーニョヴェルデと理解した方がよさそうです。
ヴィーニョヴェルデはロゼも健在
豊富な固有品種を生み出す産地であるヴィーニョヴェルデ地方では、様々なワインが造られています。
ポルトガルのワインを支える若手の作り手が色々なチャレンジを続ける中、ヴィーニョヴェルデのロゼも造られるようになりました。
ヴィーニョヴェルデの製法で造られるロゼは、ヴィーニョヴェルデの特徴であるクリスピーな微発泡、そしてフレッシュで軽やかな飲み口に仕上がります。
ヴィーニョヴェルデの魅力に憑りつかれてしまったら、つい試したくなってしまうワインです。
ヴィーニョヴェルデ に料理を合わせるなら…
ポルトガルの美し海岸線から比較的近い地域で栽培されたブドウが使われるヴィーニョヴェルデは、海の幸であるシーフードとのペアリングが舌を喜ばせます。
ポルトガルではメジャーな食材である新鮮なタコを使った海鮮料理や、魚介のマリネやカルパッチョなどの前菜、エビなどのお刺身や魚介類のフリットにも抜群に合います。
クセの少ないチーズやアボカドをのせたサラダや、意外なところではポン酢をほんのり効かせたフレッシュな前菜と合わせてお食事をスタートさせれば、にぎやかで楽しい食卓が約束されます。
もう定番になり始めている天ぷらとのマリアージュや、冬なら水炊きのようなシンプルな鍋ともよく合い、ワインのフレッシュさを活かすために十分に冷やして楽しまれることをおすすめします。
ヴィーニョヴェルデの魅力について見てきましたが、いかがだったでしょうか。緑のワインと称されるポルトガル独自のワインは、現在世界中のワイン愛飲家たちを魅了し始めています。
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