ポルトガルのワインが世界で有名になるうえで、大きく貢献した地方があります。
ポルトガルの北部の中央に位置し、赤、ワインとも優れたワインを生み出し続け、日本の文豪檀一雄も愛した、それが『ダン(Dão)』地方のワインです。
「何を飲むか迷ったら“ダン”のワインを飲め」と言われるほど、国内でも高い評価を受ける優れたワインを生産し続けるこの地域に、突如として現れ、話題となっているワイナリーがあります。
カルロス・ルーカス氏率いるマグナム社です。今回は良質なワインを育むダン地方の特徴と、マグナム社についてみていきましょう。
ダンワインはブルゴーニュと並ぶワイン産地?
ダンワインは、ポルトガル北部の中心部にあるダン地方で生産されるポルトガルワインです。
多くの人が、ダンはポルトガルの恵まれた地域であり、赤と白のワインが生産され、常に良質のワインを生み出すことから“ポルトガルのブルゴーニュ”と称されることもある地方です。
この地方は、ポルトガルでも最も古い時代からワイン生産の境界線を定めた産地の1つで、 1908年からダン地域として区分されました。
1990年以降は、この地域は原産地管理(DOC)に認定され、さらなるワインの品質向上と品質維持を実現しています。
ダンワインを生産する土地の特徴とは?
ダンワインが生産される地域は、大西洋からの風の影響からブドウを守る山々に囲まれ、なだらかな起伏が続く平野で形成されています。
そしてダン地方には多くの松の木が自生して風を遮っています。松林がダン地方の風景のシンボルとなっていて、それらの松がブドウ園を守るという大きな役割を果たしているのです。
この地方の気候は温暖ですが、冬は寒くて雨が多く、夏は暑くて乾燥しています。
また、この地方の気候は地域によって様々な特徴を持ち、各サブリージョンのワインの品質に影響を与えるため、それぞれのワインの風味に違いをもたらすのです。
ポルトガルのワインの生産構造も大きく変化
ダン地方のブドウ栽培が大きく発展したきっかけは、奇しくもブドウの害虫であるフィロキセラの大発生によるものでした。
ブドウの多くを失い、ワインの生産が大きく落ち込んだのち、この地域のワイン醸造家たちの情熱によってワイン造りが再生し、大きく進化したのです。
ダン地方のワイン生産の流れは、地域のブドウ生産者が協同組合にブドウを納品し、協同組合が生産したワインを、中規模および大規模の企業に納品。
それをボトリングして販売するという方法によってワインが流通していました。
1986年にポルトガルが欧州共同体(当時のEC、現在のEU)に加盟すると、大企業が土地を購入し、独自でブドウを栽培からワインの瓶詰めまでを行うようになったため、ポルトガルのワイン生産の流れに変化が起きました。
しかし一方で、売り先を失った協同組合はワイナリーを近代化させ、オリジナルのワインブランドを立ち上げ、中でも一部の小規模生産者は、自らワインを販売するようになったのです。
このように、ポルトガルのワイン生産には大きな変革が起き、組合単位でポルトガルのワインが製造・販売されるようになり、ワインの品質が向上するという新しい流れも生まれたのでした。
変わっていく中で変えられないものがある
その潮流の中で、ダンのワイン造りも、他の地域と同様に変化しようと立ち上がりました。
多くの生産者は、他のポルトガルの地域のワイン生産のスタイルを模倣しようと試みたのですが、ダンで生産されるワインが他の地域のワインに比べ独特だったため、その挑戦はうまくいかなかったのです。
その理由は、ダン地方のワインが他の地域のワインと比べ、早飲みに向いていないというものでした。
ダンのワインを美味しく飲むためには、ボトル内での熟成期間がどうしても必要となってしまうというのが、その原因だったのです。
このエピソードがダン地方のワイン造りのアイデンティティとして知られるようになり、“本来のワイン造り”がこの地方のワインボトルには詰められていると逆に話題となったのです。
ダン地方に突如として現れたマグナム社とは?
そんなダン地方に根を張ることを選んだワイナリーが、マグナム社です。ダン地方でも伝統と革新という相反するテーマを掲げて美味しいワイン造りを熱心に行うマグナム社はどのようなワイナリーなのでしょうか。
マグナム社は、ダン地方出身のカルロス・ルーカスの想いから生まれたワイナリーで、古くからの伝統を重んじるワイナリーが多い中、「革新とダイナミズム」という目標を掲げる、新進気鋭の醸造家によって構成されるワイナリーです。
一見、斬新な手法でワイン造りを行うようにも思われますが、伝統と歴史を重きに置き、高品質のワインの生産を目指しています。
マグナム社は、2011年にカレガル・ド・ソルという町で設立され、本社をワイン製造施設があるキンタ・ド・リベイロ・サントに置いています。
“ブドウ畑”と“ワイン”と“人”という3要素を最も大切にするこのワイナリーのオーナー、カルロス氏は、もともとコインブラで生まれましたが、ダン地方にゆかりのある人物です。
25年以上ワイン造りに熱中してきた彼は、ポルトガルのワイン業界でも注目されるような経験を積んだ一人とされていて、自らの夢と野心によってワイナリーを構えるに至りました。
ワイン造りに人一倍こだわりを持つ彼ですが、社会貢献にも力を入れていて、この地域の開発プロジェクトにも熱心に取り組んでいます。
伝統に根差した新しい伝統の始まり
1995年にカルロス氏の父がキンタ・ド・リベイロ・サント園を購入し家を改造し、現在ダン地域のブドウ園に、以前の園からブドウの木を移植しました。
そして、そこでできたワインをわずか5年後の2000年に発表したのでした。
古いワインの地域というイメージがあったダン地方ですが、“モダンなダン”というイメージを作り上げた功労者でもあります。
2008年には“Revista dos Vinhos”というポルトガルのワイン専門誌に「今年の醸造家」として表彰されました。
マグナム社が管理するブドウ園は、アレンテージョ地方、ヴィーニョヴェルデ地方、ドウロ地方にまで及びますが、キンタ・デ・サンタ・マリア園を買収したことによって、会社の核となるイデオロギーはよりダン地方に根差したものとなりました。
トウリガ・ナショナル、ティンタ・ロリス、アルフロ・シェイロ、イェンなど、20年以上前の古いブドウの木を、10ヘクタールにわたって新しいブドウ園に植え替え、新作ワインとして2020年に発表するなど、改革の手は休めません。
「成功の裏には、常に人がいる」
彼が率いるチームは、プロジェクトへのコミットと、共通の想いの下、挑戦し続けています。経験豊かな人材と、若さ溢れる人材がバランスよくいるこのチームには、高度な専門性を持つ社員が多く、マグナム社の強みとなっています。
この“人”こそが、ワイナリーの持続的な成長と、ブレのないブランディングを可能としているのです。マグナム社のワインは、現在では100万本以上のボトルが生産され、世界約20か国に輸出されています。
もっと詳しくポルトガルワインについて知りたい方は、こちらもご覧になってください。
マグナム社のワインのおすすめ
ポルトガルワインの魅力はなんといっても、その土地ならではのブドウを使った、オリジナリティ溢れる味わいです。
1ヘクタールあたりのブドウの固有品種が世界最多といわれるポルトガル。多品種をブレンドした味わい深いワインが数多く生産されています。
そんな特徴を持つポルトガルワイン。以下ではマグナム社オススメのワインをご紹介します。
ピーニャ【白】
シトラスの色にトロピカルフルーツやオレンジのようなさわやかなアロマ。
バランスの取れた程よい酸味が、すっきりとした味わいの余韻を長く残します。
ピーニャが生産されているのは、800年以上にわたり高品質なワインを造り続けるポルトガルの銘醸地、ダン地方。酸味が特徴のワインが多い地域です。
原産地:ポルトガル/ダン地方
品種:エンクルザード、マルヴァジア・フィーナ、ビカル
味わい:中辛口
ポルトガルワインを通販で1本からご購入頂けます
ワインは専門店でお買いになっている方も多いかと思います。しかし、現在ではお好きなお店のネット通販でワインを購入できるようになってきています。国内でも、ワインを楽しむ人が増えてきて、そのニーズの高まりとともに、気軽にネット通販で購入するできるように環境が整ってきています。
しかし、ワインなどの飲料をネットで購入する際の問題は、インポーターがレストランなどに直接販売するために、個人で買う際もケースで買わなければならないということが起こりうるということです。
AraiMartでは、20種を超えるポルトガルワインを1本からご注文いただけます。ポルトガルにグループ会社があるため、 日本でなかなか出会えないポルトガルワインを、お求めやすい価格でご提供しています。ご自宅のセラーに、ポルトガルの彩りを添えてみるのはいかがでしょうか。
コメント
[…] ポルトガルワインの愛飲家が注目。ダン地方の新風マグナム社とは? […]