意外と知られていませんが、ポルトガルはワインの生産量も多く、一人当たりのワインの年間消費量も世界トップという、世界屈指のワイン王国です。
ポルトガルは西は大西洋、南は地中海の影響を受け、内陸は大陸性気候であるなど、気候や土壌の多様性が豊かで、その土地ならではのワインが造られるのも特徴の一つです。
高温多湿で降雨量が多いにもかかわらず、強い日差しに恵まれる日も多く、昼夜の気温差が大きいため、質の良いぶどう栽培に適しています。
土壌は地域によって変化に富み、北部と内陸部では花崗岩や片岩、南部と沿岸部では石灰質、粘土や砂が多くなります。さらに、同じ地域に異なる土壌をもつ場所もあり、多彩な土壌が個性豊かなポルトガルワインの源になっています。
また、ポルトガルワインで特筆すべきは土着品種の多さです。ポルトガル固有の品種は250種類以上も存在すると言われていて、世界一の品種の豊かさを誇ります。
そして、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどのメジャー品種ではなく、古来より受け継がれたポルトガル土着の品種が、今でも一般的に使用されています。
そんなバラエティとオリジナリティに溢れるブドウを生み出すポルトガル。決して広くない国の中にもかかわらず、様々な気候的、地理的要因によって、まったく風味の違うワインが作られます。
今回はそんな魅力的なポルトガルワインを産み出すポルトガルのすべての産地を紹介します。
トラス・オス・モンテス(TRÁS-OS-MONTES)
ポルトガル北部のスペインとの国境にトラス・オス・モンテス地方はあります。この地方はマラン山とアルバン山のふもとに位置し、ドウロ川の北側、そしてミーニョ川の東側という自然豊かな場所です。
トラス・オス・モンテスはシャーブス、ヴァルパソス、プラナルト・ミランデースという3つのサブリージョンからなります。シャーブスのブドウ園はタメガ川の支流が流れる小さな谷の斜面にあり、花崗岩と、片岩からなる非常に肥沃な土壌を有します。
ヴァルパソスの土壌はほとんど片岩で、花崗岩質の土壌もみられます。南東に位置し、標高の一番高い場所にあるサブリージョンのプラナルト・ミランデースはドウロ川の影響で非常に湿度が低く、風の発生がブドウ園の栽培に大きな影響を与えます。
土壌は主に片岩で、気候が多様性に富むため、この地方のワインは非常にバラエティに富みますが、それでも共通の特徴がみられます。赤は一般的にフルボディでフレッシュ。程好いストラクチャーが感じられます。
白ワインは非常にフルーティーでミネラル感があり、バランスの取れた味わいと優れた酸味があります。
ドウロ(DOURO)
ドウロ地方は、バイショ・コルゴ、シーマ・コルゴ、ドウロ・スーペリオールの3つの主要なサブリージョンに分かれています。 見るものを感動させるその景色は、その昔この地をブドウ畑に変えた人々の努力の結晶ともいえます。
この地域の土は非常に硬く、ほとんどが頁岩と花崗岩で構成されていて、地形の急な傾斜もあるため、決して良い土壌とは言えません。
段々畑にあるブドウの木はそれぞれの段と、山の頂上に隙間なく植えられています。 先人の地道な努力によって織りなされるこの風景は、2001年にユネスコによって世界遺産に登録されました。
ドウロには古くからテーブルワインを製造しているワイナリーもありますが、これらのワインは伝統的な酒精強化ワインのポートワイン用のブドウ栽培に比べるとその歴史は浅く、まだまだ目新しいものとして扱われています。
しかし、近年この地方で重点的に作られるようになってきているテーブルワインは年々質が向上し、現在では世界的に見ても上質なワインとして認知されるようになってきています。
ベイラ・インテリオール(BEIRA INTERIOR)
国の中心部に位置するベイラ・インテリオールは、工業都市と歴史的な村、高原と山々が混在する地域にあり、滝、川がなどの自然に恵まれています。農業においては、ケルト人が開墾した痕跡が残っていますが、ワインの生産を本格的なものにしたのはローマ人でした。
この地域では、12世紀初頭、フィゲイラ・デ・カステロ・ロドリゴにある修道院の修道士の手によって、ブドウ園文化が本格的に花開きました。
1999年には、原産地域DOC(Denomination of Controlled Origin)に、カステロ・ロドリゴ、コヴァ・ダ・ベイラ、ピニェルのサブリージョンも含まれることになりました。
近年のベイラ・インテリオールで生産されるブドウは、国内外を驚かせる品質に達しています。そのブドウを産み出すブドウ園は、エストレラ、マロファ、マルカタなどの周囲の山々や、この地方自体が標高400〜700メートルにあることが大きく影響しています。
土壌はほとんど花崗岩ですが、頁岩と砂質も混じっています。気候は、温度変化に富み、大陸からの影響を強く受けます。夏の暑い期間は短いですが、非常に暑くて乾燥します。また、冬が長く、かなり冷え込みます。
これらの気候的条件により、非常にアロマが強く、しっかりとした、フルーティーでフレッシュな味わいのワインが生み出されるのです。
タヴォラ・ヴァローザ(TÁVORA VAROSA)
タヴォラ川とヴァロサ川の2つの川は、この地域の名の由来になっている川です。この地域の気候のもと、花崗岩の土壌に植えられたブドウは、新鮮なワインを作り出すことを可能にし、17世紀からこの地方で造られるスパークリングワインに、理想的な酸味をもたらします。
この地域は1989年11月にポルトガルで初めて、法律によって原産地呼称制度の境界線が定められた地域になりました。 2000ヘクタールにもおよぶブドウ園は、9の各自治区によって構成されています。
タヴォラ・ヴァローザ地方の平均標高は550mほどのところに位置します。この地方の土壌は水気が少なく、有機物は乏しいですが、カリウムとリンが多く含まれています。また軽い粘土質の花崗岩の土壌となっています。
ドウロ地域に隣接し、夏は暑く冬は厳しいこの地方は、大陸からの気候の影響を大きく受けます。スパークリングワインに加えて、柑橘系のアロマが豊かな、軽くてフレッシュなボディの白と、フルーティーな香りとミディアムボディの赤も造られています。
バイラーダ(BAIRRADA)
起伏の激しいバイラーダ地方には、多くの谷が地域を分断するように走っています。この地域は大西洋に近く、温暖な気候が特徴です。
この地方の石灰岩がまばらな粘土質の土壌と、砂質の土壌の2種類の土が多様なワインの生産を可能にしています。また、この地方は小規模な農家によって成り立っているのも特徴です。
バイラーダのワインは品質が良いことで知られています。バガ種がこの地方の主なブドウ品種ですが、アルフロシェイロ、バスタード、イェーン、トウリガ・ナショナルなどの赤ブドウ品種もよく使われます。
近年では、カベルネソーヴィニヨン、シラー、メルロー、ピノノワールなどの国際的なブドウ品種が、DOCバイラーダ内での生産が許可され、バイラーダではこれらの品種と、土着のブドウ品種とがともに栽培されています。
白ブドウの品種では、ビカルとマリア・ゴメスが主要品種で、アリント、セルシアル、セルシアリーニョ、ヴェルデーリョ、ラボ・デ・オヴェリャなども栽培されています。外来品種では、シャルドネとソーヴィニヨンブランなどが作られています。
白と赤に加えて、バイラーダ産のスパークリングワインも人気があります。ポルトガルのスパークリングワインといえば、バイラーダと言えるほどの存在感で、スパークリングワインの最古のワイナリーもバイラーダにあります。
ダン(DÃO)
ダン地方はポルトガル北部のベイラ・アルタにあります。 標高の高い山岳地帯によって、この地方のブドウ園は強風から守られています。 土壌はあまり肥沃ではなく、この地域の南と西には片岩と花崗岩の土壌があります。
気候は温暖で、冬は寒くて雨が降り、夏は非常に暑くて乾燥します。サブリージョンのワインの品質は、それぞれの地域の微気候の変化が影響し、それによって特徴あるワインが仕上がります。
この地方で栽培されるブドウは、トウリガ・ナショナル、アルフロシェイロ、イェン、ティンタロリスなどの赤ブドウと、白ブドウでは、エンクルザード、ビカル、セルシアル、マルヴァジアフィナ、ヴェルデーリョなど、多種多様なブドウ品種がワインの醸造に使われます。
ダン地方のワインは、鮮度が感じられ、優雅さに溢れ、バランスがよく、また熟成によっても質の良いワインが生まれることで有名です。
ヴィーニョ・ヴェルデ(VINHOS VERDES)
この地域は湿度が高く、緑豊かな植生に恵まれています。 この地方のブドウ園の伝統的な栽培方法では、ブドウを緑色のうちに摘み取るため、ブドウが均一に熟成せず、ワインの酸味は強いものになっていました。
近年のブドウ栽培とワイナリーの近代化は、この古くからの伝統大きく変えました。 今日のこの地方のワインは軽快で、鮮度が感じられ、非常にバランスが良いものが多くなったのです。
ポルトガルの北西に位置し、ポルトガルで最も有名なリージョンの1つです。
リスボン(LISBOA)
以前エストレマドゥーラと呼ばれていたこの産地は、10年以上前にリスボンに名前が変更されました。リスボンはポルトガルの首都でもあり、海外市場からの認知度も高く、魅力的なビッグネームだからです。
ポルトガルの西海岸に位置し、気候的にも地理的にも多様性のあるこの地域では、アイレ、カンデイロス、モンテジュント、シントラの山々が特徴的な風景を作り出し、高さ10〜300メートルの標高にブドウ園があります。 気候は温暖で大西洋からの風の影響を受け、土壌によってワインの味も大きく変化します。
テージョ(TEJO)
かつてリバテージョと呼ばれていたこの地域は、よりイメージが沸きやすくするために、2009年にポルトガルの主要河川の1つとして最も有名な川と同じ名前であるテージョに改名され、国内外で広く認められるようになりました。
ポルトガルの中心部に位置するこの地域は、テージョ川の他にも、小さな丘と広大な平原、大農場、さまざまな土壌と気候、そして高品質のワイン生産が特徴的な地域となっています。
テージョのワインは、ブドウの品種と植えられた土壌に応じてさまざまな味わいが醸成され、その多くがアロマがしっかりしていて、フレッシュで、フルーティーです。
ペニンスラ・デ・セトゥバル(PENÍNSULA DE SETÚBAL)
この地方は大西洋とテージョ川とサド川に囲まれています。リスボンの南に位置するこの地域は、地形が若干の違いを見せますが、ブドウ栽培に大きな違いはありません。
この地方では全地域でブドウ作りが行われています。セラ・ダ・アラビダの斜面にあるブドウ園を除いて、ほとんどのブドウ園が平坦な地域にあります。
土壌は決して豊かではありませんが、粘土石灰岩が多く、ほとんどが砂質です。平坦な土地が多く、例外的に非常に穏やかな起伏があるのみです。 気候は地中海性気候で温暖です。
アレンテージョ(ALENTEJO)
アレンテージョのワインの歴史は古く、伝統的なワイン造りが行われてきた地方ですが、ここ数十年で力をつけ、国内最大のワイン生産地域となり、ポルトガルワインの原産地の中でも最も認知されている地方です。
芳醇なフルーティなアロマが特徴のアレンテージョワインは、ポルトガル国内外で人気があります。
この地域の気候は温暖で、地中海と大陸の気候の影響を強く受けます。 この地方は全体的に平野ですが、ポルタレグレ地域では、1000mほどの標高のあるセラ・デ・サンマメデの斜面でブドウが栽培されています。
土壌は花崗岩質のものが多く、頁岩や石英を含む岩石質の土も多くみられます。
アルガルヴェ(ALGARVE)
アルガルヴェ地方は、モンシケの山なみが北部からの冷たい風を遮り、ブドウ作りに好ましい気候が特徴です。 アルガルヴェでは、ラゴス、ポルティマン、ラゴア、タヴィラと4つに原産地管理(DOC)がされていて、近年、これらの地域から新しいワインブランドが次々に市場に登場し、話題となっています。
伝統的なブドウ品種、赤のカステランとネグラモール、白のアリントとシリアに加えて、最近ではトウリガ・ナショナルとシラーの赤ブドウが評判になっています。赤ブドウは国際的に有名なブドウ品種で、この地方のテロワールと非常に相性が良いことがわかっています。
最近では一部の生産者たちが、シャルドネやヴィオニエなどの国際的なブドウ品種に加え、アラゴンやヴェルデーリョなどの、ポルトガルの伝統的なブドウ品種にも力を入れています。
アゾレス諸島(AÇORES)
大西洋の真ん中に位置するアゾレス諸島は、火山性の土壌で、雨が多く湿度も高いですが、年間を通じて気温が穏やかな海洋性気候が特徴です。
この地方では、木々などの自然を活用してブドウの木を保護したり、人工的に作られた壁など使うことで、強風や海水の影響からブドウの木を守るようにして栽培を行っています。
この地方のテロワールは特徴的で、フレッシュでミネラルの強いワインが生み出されます。このミネラルは微量の塩水の影響によってもたらされるものです。
この地方のブドウの文化は15世紀から存在し、島々の中でもピコ島が最も代表的で、その中でも古くから造られているのが、甘くてテクスチャのあるリキュールワインです。何世紀にもわたって評判のワインですが、現在この島ではテーブルワインも生産されています。
特に、伝統的なブドウ品種であるヴェルデーリョや、アゾレスの土着のアリント(アリント・ドス・アゾレス)、テランテスなどによるフレッシュで塩味の感じられる白ワインの人気が高まってきています。
マデイラ(MADEIRA)
マデイラワインはポルトガルでは、宝物に例えられるワインの一つです。その歴史は1419年の島の発見まで遡ることができます。ギリシャから伝わったとされるブドウ品種を、この地で栽培することを命じたのは、エンリケ航海王子でした。
それらのブドウには、島内での栽培が最も盛んにおこなわれているティンタ・ネグラモールやセルシアル、ブアル、ヴェルデーリョ、マルヴァジアが続き、生産量の少ない貴重なテランテスなどがありました。現在ではこれらのブドウを使った高品質のワインが生産されています。
これらのブドウによって造られる酒精強化ワインの熟成は、50度に近い温度で数ヶ月間行われます。製造されるワインは、辛口、半辛口、半甘口、甘口、そして、若いものから古いものまでバラエティに富み、それぞれの違う味わいが根強い人気の秘訣となっています。マデイラ島へ訪問すれば、きっと素晴らしい文化が出迎えてくれるでしょう。
AraiBrandおすすめのポルトガルワイン
ポルトガルワインの魅力はなんといっても、その土地ならではのブドウを使った、オリジナリティ溢れる味わいです。
1ヘクタールあたりのブドウの固有品種が世界最多といわれるポルトガル。多品種をブレンドした味わい深いワインが数多く生産されています。
そんな特徴を持つポルトガルワイン。以下ではAraiBrandオススメのワインをご紹介します。
ポルトガルワイン【赤】のおすすめ商品
口の中に広がるブドウ本来の果実味に、どこか懐かしさや温かみを感じられるのがポルトガルの赤ワインの特徴です。ここではおすすめのポルトガルの赤ワインを紹介していきます。
ドナ・エルメリンダ
ジャパンワインチャレンジ2019銀賞を受賞したワインです。色調は濃く深い赤色で、マデイラの香りや高級な完熟した赤肉系果実の香りが漂う質のまろやかなタンニンが感じられます。心地よい味のハーモニーが長く口に残る赤ワインです。
原産地:ポルトガル/セトゥーバル地方
品種:カステラォン、カベルネ・ソーヴィニョン、トウリガ・ナショナル
味わい:ミディアムボディ
ポルトガルワイン【白】のおすすめ商品
ポルトガルの白ワイン用ブドウ品種はほぼ土着品種で、その種類も多岐にわたります。ポルトガルにはイワシなどの魚を塩焼きで食べたり、フリットにして食べる文化があります。日本と共通した食文化があるという点でも、ポルトガルの白ワインは、日本の食にも合わせやすいワインです。その中でも白ワインのオススメをご紹介します。
ドナ・エルメリンダ【白】
アジア最大規模のワインコンテスト「ジャパンワインチャレンジ」にて、2019年金賞を受賞した白ワインです。
色調は緑がかった麦の穂色。濃厚なトロピカルフルーツとはちみつの香りが漂います。酸味と甘み、アルコールと果実感の複雑な味わいで、余韻は長く口の中に残ります。
原産地:ポルトガル/セトゥーバル地方
品種:シャルドネ、アリント、アンタオン・ヴァス、フェルナオン・ピレス
味わい:辛口
ヴィーニョヴェルデのおすすめ商品
爽やかでキレのある酸とフルーティな果実味に溢れ、軽やかな辛口のヴィーニョヴェルデ。アルコール度数が低めで飲みやすく、ワイン初心者でも親しみやすい味わいも魅力です。飲み疲れることなくカジュアルに楽しめるグリーンワインは、国内でも人気がでてきています。そんなヴィーニョヴェルデのおすすめをご紹介します。
フガス
フルーティで軽快、滑らかな口当たり。柑橘系の色調を持ち、モダンで爽やかなワインです。8~10℃にキリッと冷やしたヴィーニョ・ヴェルデ「フガス」は、白身魚の料理、鶏肉のような淡白な肉料理と相性が抜群です。
原産地:ポルトガル/ヴィーニョヴェルデ地方
品種:ロウレイロ、トラジャドゥラ
味わい:辛口
ポルトガルワインを通販で1本からご購入頂けます
ワインは専門店でお買いになっている方も多いかと思います。しかし、現在ではお好きなお店のネット通販でワインを購入できるようになってきています。国内でも、ワインを楽しむ人が増えてきて、そのニーズの高まりとともに、気軽にネット通販で購入するできるように環境が整ってきています。
しかし、ワインなどの飲料をネットで購入する際の問題は、インポーターがレストランなどに直接販売するために、個人で買う際もケースで買わなければならないということが起こりうるということです。
AraiMartでは、20種を超えるポルトガルワインを1本からご注文いただけます。ポルトガルにグループ会社があるため、 日本でなかなか出会えないポルトガルワインを、お求めやすい価格でご提供しています。国内でも人気が高まってきているヴィーニョヴェルデももちろんごお取り扱いしております。ご自宅のセラーに、ポルトガルの彩りを添えてみるのはいかがでしょうか。
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